チンチラのための冬の寒さ対策の理想的な方法と注意点
チンチラは高温多湿に全く適応できず、日本の気候環境の中ではエアコンを用いた暑さ対策が不可欠な動物です。
では、もう高温多湿の時期は過ぎたから、冬の寒さ対策は必要ないのかというとそうではなくて、暖かさが感じられる場所を局所的にチンチラケージにつくってあげる必要があります。
チンチラのための寒さ対策としてどのような寒さ対策用品を用いるのがおすすめなのか、どこをどのように暖めるのがよいのか、部屋全体を暖める必要はないのか、注意しなくてはいけないことはどんなことなのか?など、チンチラをお迎えした時に私が疑問に思っていた「チンチラのための寒さ対策のポイント」をまとめました。
チンチラに寒さ対策は必要?
チンチラの故郷は、南米のペルー、ボリビア、チリ、アルゼンチンにまたがるアンデス山脈の西の山麓領域で、標高が3000~5000mと高く、寒く乾燥した山岳地帯です。
棲息地では冬には気温が氷点下、湿度が0%になることもあり、厳しい環境に適応するためにチンチラの被毛は非常に密に生えていて、1本の毛根から80~100本くらい
の細毛が密生しているので、暑さよりも寒さに耐性があります。では、暑さ対策は必要だけれど寒さ対策は必要ないのね?というとそれは誤りで、冬には体温を維持できる暖かい場所を設けてあげる必要があり、すきま風が吹いていたり、隠れる場所がない寒い部屋にいると、肺炎になったり体調を崩す原因となってしまいます。
体温を維持できる暖かい場所は、巣箱に設けてあげるのが一番理想的なんじゃないかな~と思います。
それはどうしてか?というと、野生のチンチラは12~100頭の集団をつくる群居性をもち、岩の割れ目や穴を棲み家としていて2~5家族で暮らしている
ので、外は厳しい寒さであっても住まいの中では家族で身を寄せ合って暖め合い温もりを感じながら眠ることができていたはずだからです。暖かさを感じながら安心して休むことが出来る巣箱を用意してあげることが、チンチラのための寒さ対策として一番求められることだと思います。
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「カラーアトラス エキゾチックアニマルの診療指針」( 霍野晋吉 著 / 株式会社インターズー発行 / 1998.12 ) |
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Hoefer HL.Chinchillas.Veterinary Clinics of North America.Small Animal Practice 24(1).1994 (「カラーアトラス エキゾチックアニマル 哺乳類編」( 霍野晋吉、横須賀誠 著 / 株式会社緑書房 発行 / 2002.7 ) 内で参考文献として紹介 ) |
寒さ対策を始めるタイミング
チンチラのための寒さ対策を始めるタイミングについては、私の個人的な考えになりますが、室内の最低温度が20℃に届かなくなったら寒さ対策を始めるタイミングだと思っています。
私の失敗談なのですが、今年ティモのチンチラケージに寒さ対策用品を取り付けたのは10月19日で、この日の関東地方は31年ぶりの冷え込みで、ニュースでは師走並みの寒さだと報道されていました。
ニュースを見て、慌てて寒さ対策を始めましたが、その日のチンチラケージを置いている部屋の室温は、最低室温が20.8℃、最高室温が23.5℃、平均すると22℃程で、ティモの様子を見ていると暖かさが感じられる巣箱を選んで過ごそうとしていなかったことから、寒さ対策を始めるにはまだ早かったんだと判断して、一旦取りやめることにしました。
現在では、最低室温が18℃程度、最高室温が22℃程度、平均すると20℃くらいで、寒さ対策を行っている状態ですが、ティモは自らすすんで暖かさを感じながら眠ることができる巣箱を選んで、気持ちよさそうに寝ています。
寒さ対策に特に注意が必要なチンチラたち
健康な大人のチンチラももちろんではありますが、特に冬の寒さ対策に配慮してあげたほうがいいな~と思うチンチラたちは、
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で、冬の寒さ対策に限らず、季節に沿ってより確実な季節対策を施してあげる必要があると思います。
上に挙げたチンチラたちに共通しているのは、免疫力が低下しているということ。
免疫力の低下の原因が、病気だったり、年齢だったり、妊娠や出産、子育てだったりと色々ありますが、もう一つ加えて注意しなくちゃいけないな~と思うのが「環境の急激な変化による緊張・ストレス」による免疫力の低下です。
冬には温かいぬくもりが感じられ、安心して眠ることができる巣箱を用意して、寒さ対策をしてあげることで、緊張や弱った体を癒してあげることにもつながると思います。
チンチラのための寒さ対策の3つの方法
チンチラのための寒さ対策の方法としては、大きく3つに分けられ、
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方法 |
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方法 |
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エアコンなどを使って 方法 |
の3つの方法があります。
①と②の寒さ対策の方法は、傍にいる間だけ暖かさを感じられる局所暖房、③はチンチラケージが置かれている部屋全体を暖かくする全体暖房だということが大きな違いです。
「①チンチラケージの外側から局所的に暖める」おすすめなヒーター
まず紹介するのは、チンチラケージの外側から局所的に暖めるのにおすすめなヒーターです。
私が、①のチンチラケージの外側から局所的に暖めるために利用しているヒーターは、「みずよし貿易 フューチャーアロー 遠赤外線マイカヒーターⅡ」で、5~6年前にうさぎのしっぽさんの柴又店で購入したものです。
チンチラのための冬の寒さ対策として、チンチラケージの外側から局所的に暖めるのに、「みずよし貿易 フューチャーアロー 遠赤外線マイカヒーターⅡ」は一番おすすめできるヒーターだと思います。
こちらが、みずよし貿易さんの遠赤外線マイカヒーターⅡです。
パッケージには取り外し可能な自立スタンドと2mの電源コードが同梱されていて、別売の専用ステンレスホルダーを購入すれば、自立スタンドを取り外してチンチラケージの壁面に引っ掛けて使用できるようになります。
久しぶりに通販サイトを覗いてみたら、「みずよし貿易 フューチャーアロー 遠赤外線マイカヒーターⅡ」を販売しているお店がほとんどなかったので、びっくりしてみずよし貿易さんに質問してみたところ、事情があって2017年の在庫をきらしてしまっていたそうですが、11月下旬から順次取扱店に発送を開始しているとのことですので、まもなく取扱店の店頭にも並ぶと思います。
どうして「みずよし貿易 フューチャーアロー 遠赤外線マイカヒーターⅡ」が、チンチラケージの外側から局所的に暖めるヒーターとして一番おすすめなのかというと、
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別売のステンレスホルダーを利用することで、チンチラケージの外側の壁面から掛けて使うことができる |
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チンチラケージの外側に取り付けるので、いたずらされる心配がなく、安全・安心 |
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サーモスタットで温度管理されているので、ヒーターの表面温度が80℃±5℃より大きくずれる心配がない |
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遠赤外線マイカヒーターⅡが取り付けられたチンチラケージの壁面の温度は室温よりプラス2~3℃程しかならないので、暖かくなりすぎる心配がいらない。 |
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消費電力は60Wで、1日中連続使用しても1ヶ月の電気代は約988円 |
遠赤外線マイカヒーターⅡの単品の商品価格は14,000円前後、専用ステンレスホルダーの商品価格は3,500円前後と、初期費用は高額になりますが、安全で長く使うことができ、暖かさは感じられても暖かすぎることはないちょうどよい具合で、とってもおすすめな商品だと思います。
「②チンチラケージの中を局所的に暖める」おすすめなヒーター
こちらは、ティモのチンチラケージに2つある巣箱のうちの一つ、「KAWAI フルハウス」の上に置いているパネルヒーターで、「マルカン ほっとうさ暖 リバーシブルヒーター Mサイズ」です。
チンチラケージの中に置いて局所的に暖める方法を用いる場合には、齧ったりしていたずらされる危険性があることを考慮して、対策を施されている商品の中から選ぶ必要があると思います。
私は、表面温度が異なる両面使用可能で、電源コード部分に金属チューブを被いいたずら対策が施されたパネルヒーターを選びました。
同じような商品はGEXさんやハイペットさんからも販売されていますが、若干の違いがあります。
大きさがほぼ等しいMサイズ相当のものを比較しています。
「マルカン ほっとうさ暖 リバーシブルヒーター Mサイズ」と「ハイペット ほ~っと気分 小動物用ヒーター」は、大きさや消費電力、電源コードの位置、表面温度もほぼ同じですが、「GEX ホッと2WAYヒーター Mサイズ」は特徴が異なり、消費電力が若干低くて表面温度も控えめ、電源コードの位置が角についていて、ケージの外側に吊るして使用できるようにパーツが同梱されています。
チンチラケージの中に置いて使用するものとして選ぶには、「GEX ホッと2WAYヒーター Mサイズ」は吊るすためについている突起部分がいたずらの的になってしまう気がするので、「マルカン ほっとうさ暖 リバーシブルヒーター Mサイズ」か「ハイペット ほ~っと気分 小動物用ヒーター」のどちらかがいいんじゃないかな~と思います。
チンチラケージの中で使用するヒーターとして電球式ヒーターはおすすめできません
通販サイト等で小動物用の保温用品を検索すると、「マルカン ほっとうさ暖 リバーシブルヒーター Mサイズ」のようなパネルヒーターだけではなく、電球式ヒーターも候補としてでてきます。
電球式ヒーターとは、ヒヨコ電球と呼ばれる明るくならない保温電球を熱源としてスチール製のカバーで保護したもので、表面温度を一定に保つ機能は備わっていません。
別売のサーモスタットを組み合わせれば制御できるようになるのですが、制御するのは同梱された棒状のセンサーを配置した場所の温度であって、スチール製カバーの表面温度でも、保温電球の表面温度でもありません。
そして、さらに心配なのは、電球式ヒーターのスチール製カバーの表面をいたずらしてしまう可能性が高いことです。
ぽつぽつと開いた穴に歯を引っ掛けてしまったら、慌ててしまいパニックを起こします。
パニックを起こしてしまうと自分自身ではコントロールできないので、余計に状況から脱することができず命にかかわる最悪な事態に陥ってしまいます。
ちょっとでも危険な可能性があって対処が難しい場合には選択肢から外すのが一番です。
「③部屋全体を暖める」全体暖房も行う必要がある室温の目安
先に述べた、「①チンチラケージの外側から局所的に暖める」方法と、「②チンチラケージの中を局所的に暖める」方法は、どちらもチンチラのための冬の寒さ対策として、チンチラケージの周囲を局所的に暖める方法でしたが、それでは部屋全体をエアコンなどを用いて全体暖房する必要はないのか?というお話に移ります。
と思って調べてみると、『わが家の動物・完全マニュアル チンチラ』(Richard C.Goris 総監修 霍野晋吉 医学監修 / 株式会社スタジオ・エス 発行/ 2000.10)の中の寒さ対策について書かれているページに、
室温が15℃を下回る場合はエアコンなどを使って温度調節を行う
と記載されていました。
チンチラの適温は何℃?理想的な温度と適応できる温度、熱射病の危険性のある温度について調べてみたの記事で紹介しているのですが、チンチラの適温について調べてみたところ、獣医学書ではチンチラにとって理想的な温度なのか、それとも理想的とはいえないけれど適応はできる温度なのかがわかるように「理想環境温度」と「適応できる温度」と2つに分けて説明がありました。
チンチラにとって理想的な環境温度には色んな説があって、10~15℃と書いている書籍もあれば、10~20℃と書いている書籍もあるし、17~21℃、18.3~21.1℃と探せば探すほど色んな説があり、適応できる温度も加えると範囲はさらに広がります。
おそらく、野生の生活下においての理想的な環境温度について述べている書籍と、飼育下での現実的な温度設定の範囲の中から理想的な環境温度を述べている書籍とが混在しているんだろうな~と思います。
室温が15℃を下回る場合にはただちにエアコンなどを使った部屋全体を暖める必要があるのか?というと、そこまで神経質になる必要はないと思いますが、基本的には①のチンチラケージの外側から局所的に暖める寒さ対策か、②のチンチラケージの中を局所的に暖める寒さ対策を行い、部屋の室温が15℃を下回る場合には、エアコンなどを用いた全体暖房を追加して行う目安として考える必要があると知識に加えておくといいんじゃないかな~と思います。
チンチラのための寒さ対策では、暖気から逃れられる場所をつくることも大切
前項では、チンチラのための寒さ対策の方法として、局所的に暖かさが感じられる場所をつくる方法と、部屋全体を暖める必要がある室温の目安についてまとめました。
チンチラケージの外側から局所的に暖める方法を用いるのか、それともチンチラケージの中に置き型タイプのヒーターを置いて暖かな場所をつくってあげるのか、両方とも行うのか・・・。
どの程度の寒さ対策を行うのが理想的なのかを判断する際には、チンチラケージの中には暖かさが感じられる場所だけではなく、暖気から逃れられる場所もつくってあげる必要があることを念頭に入れて決めてあげるとよいと思います。
チンチラのティモの2017年冬の寒さ対策のケージレイアウト
たとえば、ティモの場合はどのように暖かさを感じられる場所をつくって寒さ対策を取り入れているのかを表したのが上のイラストで、ティモのチンチラケージの2017年冬のケージレイアウトを記したものです。
ティモのチンチラケージの大きさは、おおよそ高さが1200mm、幅が600mm、奥行が500mmあって、上下2つに空間を分けて、1Fは主に活動の時間帯に過ごす生活空間、2Fは主に休息の時間帯に過ごすくつろぎ空間にしています。
局所的に暖かさを感じられる場所は、赤点線で囲った2つのエリアで、1つはチンチラケージの外側の壁面から局所的に暖める遠赤外線ヒーターの「みずよし貿易 フューチャーアロー 遠赤外線マイカヒーターⅡ」を、もう1つはチンチラケージの中を局所的に暖めるパネルヒーターとして、「マルカン ほっとうさ暖 リバーシブルヒーター Mサイズ」を巣箱の「KAWAI フルハウス」の上に乗せています。
冬の寒さ対策のケージレイアウトとして私が気を付けたのは、過ごしたい暖かさの場所をティモが選ぶことができるケージレイアウトにするということ。
暖かさを感じながら眠りたいときには「KAWAI フルハウス」の中で寝て、暖気から逃れて寝たいな~と思うときには「SBSコーポレーション オリジナル円筒巣箱」を選べば、暖気を感じずに休むこともできます。
活動の時間帯にも、暖かさを感じたいな・・と思うときには、2Fフロアの壁面に近い位置で過ごせば暖かさを感じることができます。
このように、チンチラケージの外側から局所的に暖める寒さ対策の方法を選ぶのか、チンチラケージの中に置いて局所的に暖める寒さ対策の方法を選ぶのか、どの程度暖かさが感じられる場所をつくってあげるのが理想的なのかは、チンチラケージの大きさと巣箱の数が深く関係していて、暖気から逃れられる場所も充分に用意してあげられるのか?を考えて決めてほしいな~と思います。
リビングなどにチンチラケージを置いている場合は、暖房のかけすぎにも注意
夏の暑さ対策にはとても気を配ってきたのに、季節が冬になった途端に気が抜けてしまって、気が付いたら夏の室温設定よりも部屋が暑くなってしまっていた・・なんてことも大いにあり得ます。
特に、チンチラケージを自分たちが過ごす部屋と同じリビングルームや居室などに置いている場合は、私たち人間が暖かく感じる室温になっている段階では既にチンチラが適応できる温度を超えているといったことが大いに考えられます。
そうなると、暖気から逃れられる場所は当然なく、さらにチンチラのための寒さ対策も行っているとなると過剰になってしまいます。
私は、ティモのチンチラケージをリビングの隣の居室に置いていますが、普段は間仕切りをあけているので一つなぎの部屋になります。
全体暖房は用いずに、自分たちが居る場所だけ床暖房をつけたり、風がでないオイルヒーターをちょこっとつける程度に留めています。
温湿度計を上手に活用して、私たち人間は寒くなく、チンチラにとっては暑くない冬の時間の過ごし方を探すことを実践してほしいな~と思います。
まとめ
チンチラのための寒さ対策の考え方についてまとめてみました。
要点をまとめると、
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チンチラのための寒さ対策では、体温を維持できる局所的に暖かな場所をつくってあげる寒さ対策が理想的 |
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チンチラケージの中には必ず暖気から逃れられる場所も用意する |
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子どもや高齢、病いがちな子や妊娠・子育て中、お迎えしたばかりなど、免疫力が低下しているチンチラにはより一層季節対策に配慮が必要 |
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部屋全体の暖房を行う目安の室温は15℃を下回る場合 |
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リビング等にチンチラケージを置いていて一緒に過ごす場合は、暖房のかけすぎにも注意 |
ということになるかな~と思います。
チンチラにとって、日本は決して過ごしやすい気候環境とはいえませんが、私たちのもとに来てくれた小さな天使が安全で安心して過ごしやすく幸せに暮らせるように、夏だけではなく春も秋も冬も、一年を通して室温の管理にも気を配ってあげたいと思います。