チンチラの適温は何℃?理想的な温度と適応できる温度、熱射病の危険性のある温度について調べてみた
高温多湿に全く適応できないチンチラにとって、日本の夏はとっても過酷な気候です。
チンチラを飼育するには、エアコンを用いた室温管理が必須になるわけですが、エアコンの設定温度を何度にするのが適当なのか、その判断にいつも悩まされます。
チンチラの適温とは何℃なんだろう?と思って調べてみると、獣医学書には「適温」という言葉を使って説明されている記述はなく、本来チンチラにとって理想的な環境温度と適応できる温度の二種類に分けて説明されていました。
なるほど、ならば理想的な環境温度にしてあげるのが一番よいけれど、適応できる温度の範囲内でもよいんだな?と思って取り組んだこともありましたが、ティモと過ごす時間が増えるにつれて、適応できる温度の範囲内に設定する場合には湿度も考慮にいれて設定温度を調整する必要性を感じて取り組むようになりました。
私の手元にある飼育書や獣医学書を読んでみても同じ記述はなかったので、私の個人的な見解になってしまいますが、チンチラのための夏の暑さ対策として、エアコンの設定温度を決める際の参考になるかもしれないので、説明したいと思います。
チンチラのための夏対策。飼育書や獣医学書にはチンチラの適温は何℃と書かれているのだろう?
チンチラのための夏対策として、エアコンの設定温度を何℃にするべきかと思って調べてみると、家庭向けの飼育書には「適温」という言葉が使われている場合もあったのに対して、獣医学書では「適温」という言葉は使用されておらず、理想的な環境温度と適応できる温度とそれぞれ分けて書かれていました。
私は、チンチラの適温とは「チンチラに適した温度のこと」だと思っていましたが、「適」という字をどう理解するかによって意味が全然変わってくるなぁと思い直しました。
「適した」と解釈すれば、「適切」「ふさわしい」「十分」といった言葉が類語として含まれてくるし、「適応」と解釈できていれば、「調節」「融通」「順応」といった言葉が類語として含まれてきます。
適応できる温度をチンチラにふさわしい温度のことだと誤って理解してしまうと、チンチラの理想的な環境から遠ざかってしまっていることに自分自身が気が付いていないという事態になりかねないので、チンチラにとって理想的な温度と適応できる温度をそれぞれ分けて理解する必要があると思います。
私の手元にあるチンチラの飼育書や獣医学書に、それぞれどのように書かれているかを紹介したいと思います。
チンチラの理想環境温度
私の手元にあるチンチラの飼育書や獣医学書をみてみると、チンチラの理想環境温度として書かれている温度には幅がありました。
大きく分けると、おおよそ10~15℃、10~20℃、17~21℃の3つのグループに分けられます。
おそらく、季節を考慮に入れて書かれている文献と、そうではない文献と混ざっているからこんなに幅がでているのかなと思うのですが、日本の夏の気候を考慮に入れて考えると、18℃~21℃程度がチンチラにとって理想的な環境温度だと思います。
そして、チンチラにとって理想的な湿度は30~40%ですが、このチンチラの理想環境温度の範囲の上限を超えなければ、たとえ湿度が高くなったとしてもチンチラは適応することができる許容範囲内だと思います。
わかりやすくいうと、チンチラの理想環境温度とは、湿度の心配をしなくてもよい温度の範囲といえます。
チンチラの適応できる温度
では、チンチラにとって理想的な温度とはいえないまでも、適応できる温度の上限は何℃までなのかと調べてみると、こちらは理想的な環境温度ほど書かれている内容に幅はなく、
でした。後述しますが、適応できる温度を超えると元気を失い熱射症になる危険性があり、湿度が高くなるとその危険性は一層高まると書かれている書籍が多かったなかで、「カラーアトラス エキゾチックアニマル 哺乳類編」では、適応できる温度に設定する場合は湿度を50%以下に設定できることが条件と明記されています。
上のイメージを見て頂くとわかるように、「カラーアトラス エキゾチックアニマル 哺乳類編」が海外の参考文献の内容をもとに述べている適応できる温度の上限は他の獣医学書よりも高く、26.7℃としています。
だからこそ、湿度の条件を加えて説明している可能性も考えられますが、私個人的には、湿度を50%以下にしたとしても26.7℃はチンチラにとって高すぎると思うので賛同できませんが、適応できる温度の範囲内であっても湿度の条件を加えて調節するべきだという点は私もそのとおりだと思います。
私は、チンチラが適応できる温度は湿度が高い場合には設定温度を下げるといった調整が必要な温度として、チンチラの理想環境温度とは区別して認識しています。
チンチラの健康に悪影響を及ぼす危険性は身近に存在している
前項で、「適応できる温度を超えると元気を失い、熱射症にある危険性があり、湿度が高くなるとその危険性は一層高まる」と書かれていると説明しましたが、具体的にチンチラの健康に悪影響を及ぼす危険性のある温度について、どのように書かれているかを記したイメージが下記の図です。
前項で紹介した適応できる温度について書かれている内容にも幅があったので、それに伴ってチンチラの健康に悪影響を及ぼす危険性のある温度も書籍によって幅がでてしまっているわけですが、よく読んでみると、「熱射病になる」と書かれている書籍と、「熱射病になる危険性がある」と書かれている書籍が混在しています。
また、共通して述べられているのは、高湿度の条件が加わるとさらに状況が悪化するということです。
私の頭の中のイメージでは、チンチラが適応できる温度とチンチラにとって危険な温度の間には、若干の猶予というか余白のようなものがあると想像していましたが、適応できる温度として書かれていることにも幅があることを含めて考えると、チンチラの健康に悪影響を及ぼす危険性のある温度は想像しているよりも身近に存在しているとわかって、気を引き締めて取り組まなくちゃいけないなと思いました。
適応できる温度の範囲内にエアコンの温度を設定するにしても、湿度が高くなると危険性がさらに上昇することも考慮に入れる必要があるので、できるだけ理想的な環境温度に近づけて、チンチラにとって危険な温度との間に十分な余白をとった方がチンチラも快適に過ごせるし自分も安心できると思って現在取り組んでいます。
まとめ
チンチラの適温にスポットをあてて、チンチラの理想的な温度と適応できる温度、チンチラの健康を害する影響のある温度について、私の手元にある飼育書や獣医学書に書かれていることをまとめてみました。
諸説ありますが、私個人的には、ティモの様子を観察してきた経験や様々な文献を読んで感じた事も考慮して、下記のように認識しています。
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18~21℃ |
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湿度を下げるための対策をできなくても適応できる許容範囲内な温度と認識 |
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湿度対策を施すことができる環境下でなければおすすめできない温度 |
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人間よりもチンチラの方が蒸し暑さに弱いことは紛れもない事実なので、最低でも人間が心地良いと感じる上限である不快指数『70』を超えないようにする必要があると認識 |
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適応できる温度は湿度によって変動するので、目安として不快指数の値を参考として利用。 |
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たとえチンチラの飼育環境を理想的な温度の範囲で維持できていても、屋外の高温多湿な気候がチンチラの体に伝わっており、健康を害する危険性は日本で暮らす以上常にあると認識 |
適応できる温度の上限を超えてしまったけれど大丈夫だったぞ?という経験をされたことのある方もいると思いますが、それなら大丈夫ってことでいいのかな?と思ってしまうと、さらなる試練をチンチラに強いることになってしまいます。
チンチラのための夏対策を見直そう!3つの改善策でティモが涼感グッズを利用しなくなりましたの記事の中でも述べたのですが、私自身、2015年にチンチラのティモのための夏対策を行ったときには、多くの飼育書や獣医学書で適応できる温度の上限として書かれていた25℃を超えないようにしようと注意することばかりに捉われてしまっていました。
2016年に夏対策を見直したところ、ティモのチンチラケージでの過ごし方に変化が見られたことで、本当はずっと環境を改善してほしいと思っていたんだなと感じて、とても反省しました。
そもそも日本の気候環境がチンチラにとって理想的ではないことや、理想的な温度から遠ざかるほど体に大きなストレスがかかること、そしてストレスはじわじわと蓄積されていくということも認識しておかないといけないことだと思います。
チンチラはストレスにとっても弱い動物です。
健康に長生きしてもらうためにも、チンチラのための夏対策をチンチラの理想に近づけてあげてほしいな~と思います。
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