チンチラの健康診断としてよく行われている各種検査を追加するとどんな病気がわかるのだろう?
『健康診断』という言葉を聞くと何となくイメージは湧きますが、具体的にはどのような意味の言葉なのかを調べてみると、
健康診断とは
診察および各種の検査で健康状態を評価することで健康の維持や疾患の予防・早期発見に役立てるものである。
とは、
と書かれていました。
健康状態を評価するために、専門機関に入院して詳細な検査を受ける人もいれば、勤務先や市区町村で行われている検査で済ませている人もいるように、健康状態を評価するためにどの程度の診察や検査を必要とするかの判断は人それぞれです。
チンチラの場合は、飼い主である私たちがどの程度健康診断として診察や検査をお願いするのかを決めてあげなくてはいけないわけですが、そもそも健康診断として行われている基本的な診察とはどういうもので、プラスしてよく行われている検査にはどのようなものがあるのかを知っていないと、健康診断の予約をするときにこちら側の要望をしっかりと伝えることができません。
健康診断としてどの程度検査をプラスして行うかによって所要時間も変わってくるので、動物病院側が余裕を持って予約時間枠を設けてくれていればよいのですが、事前に健康診断としてどの程度お願いするのかを決めておき、予約の段階で「チンチラの健康診断として、身体検査に加えて直接法の糞便検査と頭部と胸腹部のレントゲンもお願いしたい」といった感じで具体的に要望を伝えて、スケジュールを組んでもらう方が理想的です。
チンチラの健康診断として必ず行われる基本的な身体検査と、プラスしてよく行われている検査について調べたことをまとめておきたいと思います。
チンチラについて書かれた書籍だけでは十分に情報が集められなかったので、チンチラと同じ完全な草食動物のウサギについて書かれた獣医学書を中心に、小動物全般を対象に書かれた文献なども参考にさせていただいています。
チンチラの健康診断のベースとなる、動物病院で必ず行われる基本的な検査
まず、健康診断をお願いした際に、必ず行われる基本となる検査が『身体検査』と呼ばれる検査で、動物病院によっては身体検査そのものを『健康診断』や『健康チェック』と呼ぶこともあります。
通常、動物病院で診察を受けた際に支払う
です。身体検査
視診、触診、聴診によって健康状態を評価するもので、身体検査というと特別な印象がありますが、私たち人間が病院で受けている診察と基本的なことは同じです。
私たちの場合はどこか具合が悪いところがあれば、それを医師に伝えることができるので、患部を中心に診てもらうことができますが、チンチラの場合はそれができないので、全身を視て、触って、心音や消化管の蠕動音を聴いて、病態の徴候と思われる異変がみられないかを探るのが身体検査といえます。
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プラスαの検査として身体検査に追加してよく行われる代表的な検査
次に健康診断として、身体検査に追加してよく行われている代表的な検査についてです。
動物病院で行われている検査には様々な種類がありますが、健康診断として身体検査にプラスしてよく行われている検査と、私がお勧めする受診時期をまとめたものが下記の表になります。
これらは、身体検査で病気が疑われる特異的な症状が見られた場合に、獣医師からの説明のもと追加して行われる場合と、飼い主側からの要望でプラスαとして行われる場合がありますが、
それでは、ひとつひとつ説明していきたいと思います。
糞便検査
糞便検査には、一般的に行われている寄生虫種を限定しない直接塗抹法や集嚢子法(浮遊法・遠心沈澱法)といった方法と、特定の寄生虫を検出することを目的とした免疫蛍光抗体染色法やPCR法、消化管内出血の検出を目的とした便潜血反応、病原性細菌の検出を目的とした細菌培養検査など様々な種類があります。
チンチラの糞便検査として最もよく行われている検査は、糞便検査の基本ともいえる直接塗抹法と呼ばれる検査で、消化管内部寄生虫症の評価のためには浮遊法と呼ばれる検査も併用してよく行われています。
糞便検査(直接法)
糞便検査(直接塗抹法:以下、直接法という)は、爪楊枝の先ほどの量の糞便を直接スライドグラスに載せて、生理食塩水などの等張液で希釈してからカバーガラスを被せて顕微鏡で観察する検査で、糞便検査の中で最もポピュラーで基本となる検査です。
直接法の主な目的は、腸内細菌叢の変化と運動性を有する栄養型虫体の消化管内部寄生虫症を評価することです。
また、糞便に出現する全ての成分を観察できるため、消化状態を把握するのにも役立ち、糞便に被毛などが多く含まれている場合には、胃腸の鬱滞が起こりやすい状況にあることが疑われるだけでなく、飼育環境や飼育方法に改善すべき点があることを示していると考えられます。
チンチラの消化管はとてもデリケートなため、様々な要因で腸内細菌叢のバランスを崩しやすく、直接法による糞便検査は、腸内細菌叢の変化を知り消化管疾患を評価するためにできる、最も簡便でチンチラにもストレスがかからない有用な検査だと思うので、ティモは毎回必ずお願いしています。
チンチラにみられる消化管内部寄生虫症には、クリプトスポリジウムやトリコモナス、ジアルジア、コクシジウム、小型条虫などが挙げられますが、多くは糞便や汚染された床材などを口にしたことで感染する経口感染のため、お迎え前にどのような環境で飼育されてきたかが大きく関わっています。
消化管内部寄生虫症は、不衛生な飼育環境の中で集団飼育されてきたチンチラに起こりやすく、特に免疫力が低下している幼体によくみられるため、お迎え後できるだけ早い段階で糞便検査を受けるとよいと思います。
なお、寄生虫は様々な発育形態に変化し、検査法によって検出に向き不向きがあります。
直接法による糞便検査で評価できるのは、運動性を有する栄養型虫体で、トリコモナス(栄養型虫体のみ存在)やジアルジア(シストと栄養型虫体の2つの発育形態をもつ)の栄養型虫体などがそれにあたります。
寄生虫卵やシスト(嚢子ともいう:休眠状態のサナギのような形態)・オーシスト(接合子嚢:接合子の周囲に被膜、被殻が形成されたもの)は、直接法による糞便検査では夾雑物も多く検出が難しいため、クリプトスポリジウムやコクシジウムのオーシストや小型条虫の卵、ジアルジアのシストなどは浮遊法による糞便検査で検出を行います。
つまり、消化管内部寄生虫症の評価には直接法による糞便検査と浮遊法の両方が必要ということになります。
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糞便検査(浮遊法)
糞便検査(浮遊法)は、比重の高い浮遊液中で糞便を懸濁して、比較的比重の低い寄生虫卵やシスト、オーシスト等が浮遊液表面に到達するのを待ってから、表面の浮遊液を採取して顕微鏡で観察する検査で、クリプトスポリジウムやコクシジウムのオーシストや、小型条虫の卵、ジアルジアのシストといった寄生虫卵やシスト、オーシストを検出することで消化管内部寄生虫症感染を評価します。
直接法の糞便検査では、検査に使用するサンプルが爪楊枝の先ほどの量で、重さにすると約0.006gとほんのわずかなのに対して、浮遊法ではダイズ豆程度の量の糞便をサンプルとして使用し、重さにすると0.5g~1.0g程度と大幅に増えることもあって、消化管内部寄生虫症の検出率は浮遊法の方が優れています。
なお、
。浮遊法の糞便検査の欠点は、浮遊液には飽和食塩水やショ糖液、飽和硝酸ナトリウム液などがあってそれぞれ比重が異なるのですが、使用する浮遊液や試験管の材質、寄生虫種の違いによって寄生虫卵やオーシスト、シストの浮遊液表面への到達時間が異なる可能性も考えられ、また浮遊液の比重によっては浮遊しない寄生虫卵等が存在する可能性もあるということです。
したがって、一定間隔で頻繁にある程度の期間、浮遊液表面を回収して観察したり、異なる浮遊液でも試してみるなどの工夫もされています。
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[ 補足 ]
直接法と浮遊法の糞便検査の説明の中で、消化管内部寄生虫症の評価について触れましたが、注意点があるので下記に記します。
糞便検査による消化管内部寄生虫症評価の留意点
寄生虫は、感染してから虫卵等が排泄されるまでの日数(プレパテントピリオド)が種類によって異なり、その期間は糞便検査をしても検出はできません。さらに、虫卵等の排出が持続的に行われているという保証はどこにもありません。
糞便検査による消化管内部寄生虫症の評価は、寄生虫等が検出されなかったからといって絶対的なものではないということを留意しておく必要があります。
寄生虫感染が疑われる場合は、直接法と浮遊法の両方の検査を行うことや、日を改めて数回行うなどの工夫が必要となりますが、遺伝子検査で検出するという方法もあります。
皮膚検査
皮膚検査には、被毛検査(トリコグラム法)や皮膚掻爬検査(皮膚スクラッチ検査)、皮膚押捺検査(皮膚スタンプ検査)、培養検査など様々な種類があります。
チンチラにみられる皮膚疾患には、細菌性皮膚炎、湿性皮膚炎、皮膚糸状菌症、心因性脱毛などが挙げられますが、とくに幼体に皮膚糸状菌症がよくみられます。
皮膚糸状菌は、Trichophyton属(白癬菌)、Microsporum属(小胞子菌)、Epidermophyton属(表皮菌)の3菌属に分けられ、チンチラでは白癬菌属のTrichophyton mentagrophytes(毛瘡白癬菌)の感染が多く、人にもうつる可能性のある人獣共通感染症で、不適切な飼育環境や栄養失調、ストレスなどによる免疫抑制があると発症しやすくなります。
皮膚検査については、健康診断として予め飼い主側がお願いをして行うというよりも、脱毛や紅斑、鱗屑、落屑、痂皮といった特異的な症状があった場合に患部から検査試料を採取して行う検査という印象が強いので、健康診断として身体検査にプラスして行う検査という趣旨からやや遠ざかってしまいますが、代表的な皮膚検査の方法について触れておきたいと思います。
被毛検査(トリコグラム)
被毛検査(トリコグラム)は、脱毛の原因となっている疾患を鑑別するのに役立つ検査で、鉗子を用いてできるだけ皮膚に近い部分の被毛を採取し、被毛が確実に同じ方向を向くよう注意しながらスライドグラスに載せ、ミネラルオイルまたはDMSO-KOH溶液を垂らしてカバーガラスをかけ、数分~数十分静置して検査試料が軟化・透明化するのを待ってから顕微鏡で毛幹を観察します。
イメージ的には、糞便検査(直接法)の被毛版といった感じで、糞便検査(直接法)では糞便を直接顕微鏡で観察すると説明しましたが、被毛検査(トリコグラム)では被毛を直接鏡検します。
被毛の遠位端が剥離・分断化している場合は他の個体による毛咬みや自咬行動が疑われ、病変部から抜いた被毛の壊れた毛幹中に真菌胞子が存在すれば皮膚糸状菌症の疑いがあります。
皮膚糸状菌症の疑いがある場合、起病菌種を確定するために真菌培養検査を行い、菌の分離同定を行います。
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真菌培養検査
真菌培養検査は、直接鏡検の被毛検査で皮膚糸状菌症の菌体要素を認めた場合に、確認と原因菌の同定のために行われる検査で、治療効果を調べるためにも行われています。
皮膚糸状菌の感染は、水酸化カリウムで軟化させた鱗屑中に菌糸体や毛外菌分節胞子が存在することで証明され、病変部位または体全体を滅菌歯ブラシでブラッシングし、その掻爬物を皮膚用寒天培地に置いて、24~27℃の条件下で培養します。
真菌培養検査では、感染している皮膚糸状菌以外にも真菌が増殖して呈色反応を生じる場合があるので、最初の7~10日間は毎日観察し、コロニーが形成される早期から培地の呈色反応をみることがポイントとなります。
培地上に形成されたコロニーを掻き取り、顕微鏡下で菌糸、大分生子、小分生子の形状を確認して菌種を同定します。
平板培地上で3週間以内に真菌が発育しない場合は、陰性と考えることができ、治療効果を確認する目安としては、一般的に2回の培養で陰性を示すことが治療の終了とされています。
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細菌培養検査
細菌培養検査は、皮膚疾患のみならず感染性疾患が疑われる場合に行われる検査で、おもに外部検査機関に依頼をして行われるのが一般的です。
皮膚検査として行われる細菌培養検査は、細菌性皮膚炎が疑われる場合の確認と原因菌の同定を目的としています。
細菌性皮膚炎には主に2つの原因があり、一つは集団飼育下における咬み傷など外傷に起因する細菌感染、もう一つは流涙や流涎、下痢、湿った寝床など、皮膚が浸軟となる原因があって湿性皮膚炎となり、湿性皮膚炎に続発して起こる二次的感染です。
細菌性皮膚炎は、Staphylococcus aureus (黄色ブドウ球菌)が主な原因菌ですが、過密飼育されている場合などでは、消化管常在菌ともいわれる Fusobacterium necrophorum (嫌気性グラム陰性桿菌)や、湿潤環境に常在する Pseudomonas aeruginosa (緑膿菌)などの細菌も皮膚炎に関わっている場合があります。
Fusobacterium necrophorum (嫌気性グラム陰性桿菌)による皮膚炎では四肢が侵されることが多く、悪臭を伴う皮膚の潰瘍や壊死、膿瘍化によって特徴づけられ、 Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)による皮膚炎では菌が産出するピオシアニン色素によって、被毛が青色または緑色に変色することが特徴的です。
細菌性皮膚炎の治療には抗菌薬を使用する必要があるため、薬剤感受性試験を行い、結果に基づいて適切な抗菌薬を選定した上で使用します。
病状によっては元通りに治せない場合があるだけでなく、続発性であることが多いため、環境要因や行動要因への対処も重要となります。
尿検査
尿検査には、尿の色調や混濁度、尿比重を肉眼で評価する物理的性状検査と、尿試験紙を用いて潜血、尿蛋白、グルコース、PHなどの尿中濃度を大まかに評価する化学的性状検査、尿を遠心分離して顕微鏡で観察する顕微鏡検査といった3つの検査手順がありますが、チンチラの尿の色は正常な場合でも様々な要因で変化し、ミネラル沈澱物が多く含まれていて尿比重の評価も難しいため、尿試験紙を用いた化学的性状検査が最もよく行われています。
採尿の方法はいくつかありますが、最も簡便でストレスもかからない採尿法は、自然に排泄された尿を清潔な容器で回収する自然採尿法です。
できるだけ新鮮な尿で検査することが理想的ですが、動物病院での採尿は難しいのが現状です。
尿検査(尿試験紙法)
尿試験紙の上にごく少量の尿を滴下し、潜血、尿蛋白、グルコース、PHなどの尿中濃度を-、+、2+、3+といった段階で評価します。
潜血 |
尿中のヘモグロビンやミオグロビンを検出することで、尿に血液が混じっていないかどうかを調べる検査で、主に膀胱炎や腫瘍、結石などによって尿路に出血が生じていないかどうかを評価します。 また、体内で溶血が起こりヘモグロビン尿を呈した場合や、筋肉の損傷などでミオグロビン尿となった場合も陽性となります。 |
尿蛋白 |
尿蛋白は、健康でも少量検出されます。 チンチラの正常尿には炭酸カルシウム結晶が含まれており、さらにシュウ酸結晶やリン酸アンモニウムマグネシウム結晶も認めることがあります。 このような特徴が尿蛋白を偽陽性とする原因にもなっているため、泌尿器系の炎症や出血などによっても尿蛋白が増加するものの、異常を判定する量的な基準はありません。 |
グルコース |
尿に含まれるグルコース(ブドウ糖)を調べる検査で、チンチラは興奮やストレスによって高血糖に陥りやすく、ときに尿糖が陽性になります。 疾患としては糖尿病などの病気が疑われます。 |
pH |
完全な草食動物であるチンチラはアルカリ尿を示し、尿pHは約8.5程度です。 pHは食餌内容や細菌の増殖によって変化し、全身性疾患によって異化作用が亢進するとpHが下がることがあります。 |
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X線検査
チンチラでは、胸腔や腹腔を確認するための体幹のX線撮影や、歯を確認するための頭部のX線撮影がよく行われています。
X線検査は、先に紹介した糞便検査や尿検査といった検査サンプルを採取して行う検査と異なり、チンチラを保定して撮影する必要があるため、チンチラに負担をかけてしまうことになります。
チンチラにストレスをかけてしまうことになるため、チンチラの健康診断としてX線検査を加えるべきかどうかについては賛否両論あるようです。
2018年9月に緑書房さんより発行された「ウサギの医学」(エキゾチックペットクリニック 霍野晋吉著)の中で、どのようにX線撮影が行われるのかがわかりやすく記されていました。
頭部のX線撮影では、側方向、背腹方向、吻尾方向の3方向を撮影し3次元的な評価を行うことが望ましく、側方斜位像も加えるとより理想的な観察が行えるようになり、胸腹部のX線撮影では腹背方向と側方向の2方向を撮影するのが一般的です。
チンチラを保定しようとすると、細くて長い四肢を動かして抵抗する場合が多く、骨折などの事故が起きないように細心の注意を払う必要があるため、X線検査や後述する血液検査などを含むチンチラの健康診断は、チンチラの診療経験が豊富な動物病院を選ぶことも大切だと思います。
X線検査(頭部)
頭部のX線検査は、主に不正咬合といった歯牙疾患の診断の目的で行われる検査で、特に歯根に生じた問題を観察するためには欠かすことのできない検査です。
切歯も臼歯も全ての歯が一生伸び続けるチンチラが健康を保つためには、歯を摩耗して不正咬合を防ぐことがとても大切で、そのためには主食である粗い繊維を多く含んだ牧草をよく咀嚼して沢山食べる必要があります。
歯牙疾患と消化管疾患は密接に関係しており、歯が健康でなければ食欲不振になって消化管疾患を引き起こし、反対に粗い繊維を多く含んだ牧草を沢山食べれなければ歯を摩耗できなくなり、歯牙疾患を引き起こすリスクを高めることになります。
身体検査の視診では、切歯の歯冠の過長や欠損、変形の有無は確認できますが、臼歯については耳鏡などを用いても診断できるのは臼歯の歯冠に棘状縁などができていないか程度で詳細はわからず、さらには歯根の状態に至っては確認の仕様がありません。
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X線検査(胸・腹部)
胸腔や腹腔を確認するために体幹をX線撮影し、循環器疾患、呼吸器疾患、消化管疾患、肝疾患、泌尿器疾患、生殖器疾患などの病態の徴候がみられないかを観察します。
チンチラは腹腔に対して胸腔がとても小さいため、肺の奥の部分まで撮影するのは難しく、盲結腸には多量の食渣があるので個々の内臓の確認が難しいという特徴があります。
なお、胸腹部のX線画像検査で不透過性陰影が見つかった場合、陰影だけでは場所や疾患を特定することはできません。様々な疾患や可能性が考えられるため、確定診断のために超音波検査やCT検査等が必要となります。
[ X線画像検査における消化管疾患の評価 ]
消化管は、食道、胃、小腸、大腸からなり、草食動物であるチンチラは盲腸が発達しています。
チンチラは、様々な要因で胃腸の蠕動運動が低下しやすい動物です。
チンチラは嘔吐できないため、蠕動運動の低下は内容物の過剰な貯留や異常な発酵を招き、胃の鬱滞(毛球症)や胃拡張、盲腸うっ滞、鼓腸、腸閉塞などの消化管疾患や肝疾患を引き起こします。
[ X線画像検査における肝疾患の評価 ]
肝臓は代謝や異化作用の中心として、合成、異化、解毒、分泌、排泄あるいは血液保有も行う臓器で、様々な病態の影響を受けやすく、二次的に肝障害が発生する可能性があります。
X線画像検査では胃と重なるために全体像が確認しづらく、病態が進行するまでは診断がつかない場合もありますが、
肝リピドーシス(脂肪肝)は、栄養過多と慢性あるいは長期的な食欲不振によって、肝臓に過剰な脂肪蓄積が生じる病気で、起因には肥満や低繊維、高たんぱく、高脂肪な不適切な食餌、歯牙疾患や消化官疾患など様々な要因が関係しています。
肝疾患の確定診断には病理検査が必要となりますが、侵襲性が高く、早期発見・早期治療が求められる疾患なので、X線画像検査や血液検査などを活用して鑑別されることが多いです。
[ X線画像検査における泌尿器疾患の評価 ]
泌尿器は1対の腎臓と尿管、1つの膀胱と尿道からなり、チンチラにみられる泌尿器疾患には膀胱炎や尿道炎、尿路結石、腎不全等が挙げられ、加齢とともに発生しやすい傾向があります。
X線画像検査における泌尿器疾患の評価は、
[ X線画像検査における生殖器疾患の評価 ]
生殖器疾患は、雌性生殖器疾患と雄性生殖器疾患に分かれますが、両者を比較すると雌性生殖器疾患の方が多くみられ、加齢とともに増加する傾向にあります。
雌性生殖器疾患
雌の生殖器は1対の卵巣と卵管、子宮、そして1つの膣から構成されています。
雌性生殖器疾患には、子宮内膜過形成や子宮内膜炎、子宮腫瘍、子宮水腫、子宮蓄膿症などが挙げられますが、チンチラは消化管容積が大きく、常に食渣が充満しているため、X線画像上で卵巣や子宮を観察するのは難しく、雌性生殖器疾患を評価するには超音波検査の方がX線検査よりもむいています。
また、子宮内膜炎のように画像検査では診断できない疾患もあるので、雌性生殖器疾患の評価はX線画像検査のみでは行えませんが、
雄性生殖器疾患
雄の生殖器は1対の精巣と精巣上体、精管、そして副生殖腺から構成され、チンチラは精嚢線や凝固腺などの副生殖腺が発達しており、精嚢線はコイル状を呈しています。
雄性生殖器疾患には、精巣・精巣上体炎や精巣腫瘍、副生殖腺疾患等が挙げられ、加齢とともに増加する傾向にあるとされていますが、精力的に活発な年頃の元気な雄には、精嚢線分泌物が結石の核となって精嚢線結石を生じる場合もあります。
X線画像検査における雄性生殖器疾患の評価は、
実は、ティモも2018年2月に受診した健康診断(ティモ3歳)でX線画像上に精嚢線結石が疑われる不透過性陰影が発見されました。
鑑別のために超音波検査と尿検査を受け、それ以来、経過観察のために2~3ヶ月置きに腹部のX線検査を受けているのですが、経過観察の途中で不透過性陰影が消えたと思ったら、また再び写し出されました。
幸いティモに特に変わった様子はみられず、食欲も元気も問題ないのでよかったと思っているのですが、ティモの場合は精嚢線分泌物の生産が活発で、結石になるかもしれない可能性を含んでいるんだとわかったのも、胸腹部のX線検査を受けたことがきっかけでした。
飼育方法を振り返ることにもつながっただけでなく、日頃からもっと注意深く観察するようになったので、深刻な病態になる前の段階でわかってよかったと心から思いました。
今後も疾患の予防や早期発見に役立てるよう、経過観察を続けていきたいと思っています。
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血液検査
血液は血球と血漿からできており、血球とは赤血球や白血球、血小板などの細胞成分で、血漿は血液から血球成分を取り除いた液体成分です。
代表的な血液検査には、血球の数量や割合について調べるCBC(complete blood count)と呼ばれる全血球検査と、血漿中の成分や酵素の量などを調べる血液生化学検査があり、全血球検査(CBC)は体内でどのようなことが起こっているのか全身的な状態を知るのに役立ち、血液生化学検査は問題が起きている場所を知るのに役立ちます。
チンチラは体表血管が細く、保定が難しい上にストレスがかかるので、採血は豊富に血管が走行していて採血が容易に行える耳介静脈から行うのが一般的です。
血液検査には、年齢や性別、妊娠、食糞、ストレス、麻酔、日内変動、検査機器による違い、溶血など、血液検査の結果に影響を与える様々な要因があり、チンチラは食糞を行う動物なので、絶食時の血液サンプルを得ることが難しいことや、動物病院までの移動や急激な環境の変化でストレスを与えてしまうことなど、避けられない要因も含まれています。
どのような要因が血液検査の結果に影響を及ぼすかは、個体によってそれぞれ異なるので、もしも測定値が基準値から外れた場合、どれくらい外れているのかが重要な指標となって、まずは原因を探ることになるわけですが、関連した症状がない場合や繰り返し測定しても同様な数値が出る場合には、その個体にとってそれが正常である可能性も含んでいます。
血液検査は深刻な病気が隠れていないかを探る検査ですが、健康なときに検査データをとっておくと、いざ病気になったときにオリジナルの比較用データとして役立てることができるので、私はティモの健康診断として数年に一度くらいの割合で受診することにしています。
全血球検査(CBC)
全血球検査(CBC)は、体内でどのようなことが起こっているのか全身的な状態を知る目的で、機械あるいは血球計算盤を用いて、赤血球数(RBC)、白血球数(WBC)、血小板数(PLT)、ヘモグロビン濃度(Hb)、ヘマトクリット値(Ht)等を調べる検査です。
それぞれの血球成分の数や濃度を調べることでどのようなことがわかるのかを、エキゾチックペットクリニックさんでティモが全血球検査(CBC)を受けたときに頂いた資料などを参考にまとめましたので、下記に記します。
赤血球数 (RBC) |
( 個 / µL ) |
赤血球は主に骨髄で産生され、ヘモグロビンという色素を通じて酸素を身体の隅々まで運ぶ働きをしています。 赤血球数の減少は、酸素の運搬能力が低下して貧血を起こしている指標となり、反対に赤血球数の増加は、脱水していて血液の流れが悪くなっていることを示しています。 |
ヘモグロビン濃度 (Hb) |
( g / dL ) |
赤血球に含まれる赤色の色素であるヘモグロビンは、酸素を体中の組織に運ぶという働きをしています。 赤血球数が正常であっても、その中にヘモグロビンが十分に含まれていない場合には、酸素運搬能力が低下して貧血になります。 |
ヘマトクリット値(Ht) |
( % ) |
ヘマトクリット値は、血液の中にどのくらいの血球成分があるのかを容積比で表したもので、血液の濃さの指標となります。 正常では、血球の容積比は血漿よりもやや低い値ですが、貧血を起こすとヘマトクリット値は減少し、脱水では反対に増加します。 |
白血球数(WBC) |
( 個 / µL ) |
白血球には、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球などの種類があり、体内に細菌やウイルス、異物などが侵入した時、これを取り込んで破壊したり、免疫抗体を作って病原体を殺したりする働きをしています。 白血球数に異常のある場合には、異常値を示す種類が病気によって異なるため、白血球の種類別の比率を調べる白血球分画を確認します。 炎症を起こすと骨髄などで盛んに作られ、病原菌と戦うために数が増えます。また異常の多い時は、白血病などの病気も考えられます。 白血球数が少なくなると、感染を起こしやすくなります。 |
血小板数(PLT) |
( 個 / µL ) |
血小板は止血を行う細胞です。 血管が破れると血管壁にくっついて活性化することでお互いが固まり、大きな塊を作って出血を止めます。 血小板数が減少すると、出血しやすくなったり、血が止まりにくくなります。 |
私は頂いた資料に書かれた説明を読んで、『貧血』や『脱水』を起こしているかどうかがわかったところで、重要なことなのかなぁと疑問に思ったのですが、獣医学書を読んで、貧血や脱水といった症状を引き起こす原因となる疾患が沢山あることを知って、深刻な病気が隠れているかどうかを評価するのに役立つ検査なんだと深く納得しました。
例えば、貧血を引き起こす原因となりうる疾患を挙げると、外傷や炎症および膿瘍、腫瘍、卵巣・子宮疾患、肝疾患、高脂血症、敗血症、慢性感染症、歯牙疾患、腎疾患など、実に沢山あります。
反対に、脱水を引き起こす原因としては、消化器の運動性に問題がある場合に脱水を引き起こしやすく、血液中に赤血球量が増加した状態を多血症といって、相対的多血症、真性多血症、二次性多血症などが挙げられます。
血液検査に影響を与える要因があるとはいえ、体内で何が起こっているのかを把握し、深刻な病気が隠れていないかどうかを評価するのに役立つ検査だと思います。
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血液生化学検査
血液生化学検査は、血漿中の成分や酵素の量などを測定する検査で、検査項目は大きく分けると、物質濃度(単位は g/dL や mg/dLなど)と酵素活性(単位は U/Lなど)に分けられます。
代表的な検査項目と可能性が考えられる疾患について、調べたことをまとめておきたいと思います。
[ 物質濃度 ]
物質濃度は、代謝の前駆物質や反応産物の濃度を測定することによって、その代謝系が正常に機能しているのかを評価します。
総蛋白(TP) |
( g / dL ) |
血漿中に含まれる蛋白質の総和 |
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上昇 |
脱水、慢性疾患、高体温 |
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低下 |
出血、肝機能低下、消化管の鬱滞や腸炎などの消化器疾患、飢餓あるいは歯牙疾患などによる栄養不良 |
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アルブミン(ALB) |
( g / dL ) |
肝臓で合成される血漿蛋白の一種 |
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上昇 |
脱水などによる血漿量減少、高体温 |
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低下 |
出血、飢餓、消化器疾患、栄養不良、肝機能低下、異常な食糞 |
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グロブリン(GLOB) |
( g / dL ) |
総蛋白からアルブミン、フィブリノゲンなどを除いた蛋白質の総称 |
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上昇 |
慢性疾患、消耗性疾患、腫瘍性疾患 |
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尿素窒素(BUN) |
( mg / dL ) |
尿素窒素は窒素系老廃物で、アミノ酸を脱アミノ化する際に最終産物として肝臓で形成され、血液を通じて腎臓に運ばれ、尿中に排泄される。 |
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上昇 |
腎疾患、消化管出血、尿路疾患、脱水 |
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低下 |
飢餓、肝機能障害 |
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クレアチニン(CRE) |
( mg / dL ) |
クレアチニンは尿素窒素と同様の窒素系老廃産物で、血液を介して腎臓に運ばれた後、尿中に排泄される。クレアチニンはアミノ酸の分解産物ではないが、筋肉中に存在する物質で高いエネルギー代謝に関与している。 |
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上昇 |
腎疾患、重度の筋損傷 |
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総コレステロール(TCHO) |
( mg / dL ) |
コレステロールは主に肝臓で合成され、細胞膜やステロイドホルモンの原料となる。総コレステロールは血清中のコレステロールの総和である。 測定には絶食時の血液サンプルを要するが、チンチラは食糞を行うため絶食時の採血は難しく、正確な評価は難しいとされています。 |
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上昇 |
餌の脂肪過多、脂肪の代謝障害、肝リピドーシス |
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トリグリセリド(TG) |
( mg / dL ) |
グリセリンと脂肪酸のエステル。中性脂肪と同義で用いられることが多い。 測定には絶食時の血液サンプルが必要ですが、チンチラは食糞を行うため絶食時の採血は難しく、正確な評価は難しいとされています。 |
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上昇 |
餌の脂肪過多、脂肪の代謝障害、肝リピドーシス |
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グルコース(GLU) |
( mg / dL ) |
チンチラは、盲腸の腸内細菌叢が産生した揮発性脂肪酸から糖新生によってグルコースを合成する。 高血糖はチンチラにもしばしばみられますが、血糖値は年齢、妊娠の有無、餌、ストレスなどの影響を強く受けるため、解釈が難しいとされています。 |
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上昇 |
移動、保定による興奮、採血時の疼痛などによるストレス、熱中症、消化管の鬱滞や肝疾患などの疾病、外傷性や出血性のショック |
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低下 |
重度の肝機能低下、敗血症、長期の飢餓 |
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カルシウム(CA) |
( mg / dL ) |
多くの体内器官系に関与する必要不可欠な成分で、体内のカルシウムの多くがリン酸と結合して骨に蓄えられており、骨構造と歯の極めて重要な構成要素です。 また、カルシウムは細胞内液と細胞外液中の重要な陽イオンで、筋代謝や酵素の活性化、血液凝固、浸透圧調節の役目を担っています。 チンチラはカルシウムの代謝が独特で、血清中総カルシウム濃度が他の哺乳類よりも高く広い範囲を示すのが特徴的で、また食物中のカルシウムが直ちに腸から吸収され、血漿総カルシウム値は食餌からの摂取量に比例して高くなるので、大きな範囲で変動する可能性があります。 |
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上昇 |
慢性腎不全、腫瘍性疾患 |
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低下 |
飢餓、重度の下痢、カルシウムやビタミンDの欠乏 |
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無機リン(P) |
( mg / dL ) |
無機リン酸は多くの酵素系に関与し、骨の主要な構成要素となるだけでなく、炭水化物と筋の代謝に重要な役目を果たしています。リン酸は食物から摂取され、ビタミンDと上皮小体ホルモンがカルシウムと同じような形で腸からのリン酸の吸収に影響を与えています。 リン酸代謝の異常は複雑で、数多くの要素が互いに依存しあっているため、ほかの検査項目と組み合わせて解釈されます。 |
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上昇 |
腎不全 |
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低下 |
食欲低下、消化器疾患、代謝障害 |
アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT) |
( U / L ) |
アラミンアミノ基転移酵素は肝臓の逸脱酵素のひとつで、筋肉や赤血球などの組織にも認められますが、肝臓に最も多く含まれており、肝障害の指標として利用されています しかし、チンチラはイヌやネコなど他の動物種よりもアラニンアミノトランスフェラーゼの量が少なく、活性も低いため、上昇の程度は肝疾患の重篤度とは必ずしも相関しません。 |
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上昇 |
肝疾患 |
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アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST) |
( U / L ) |
アスパラギン酸アミノ基転移酵素も肝臓の逸脱酵素のひとつで、肝臓や骨格筋、心筋、赤血球に多く認められます。 チンチラを含む草食動物では肝臓に特異性は高くなく、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの活性と肝疾患の重篤度は必ずしも相関しません。 |
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上昇 |
肝疾患、心疾患、筋肉の損傷 |
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アルカリホスファターゼ(ALP) |
( U / L ) |
アルカリホスファターゼは身体内に広く分布する酵素で、主に肝臓、腸、腎臓、骨および胎盤で認められます。 通常は骨と肝臓のアルカリホスファターゼが逸脱することで、血中のアルカリホスファターゼ活性が上昇し、骨芽細胞の活動が盛んな幼若期には高くなる傾向があり、加齢に伴い骨のアルカリホスファターゼは低下します。 |
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上昇 |
成長期、肝・胆道系疾患、骨の異常 |
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アミラーゼ(AMYL) |
( U / L ) |
アミラーゼは澱粉を分解する酵素で、主に膵臓組織中に存在し、また盲腸微生物叢によっても産生されるので盲腸便中にも存在しており、胃や小腸で消化が行われる時にグルコースから乳酸への変換に関わっていることが知られています。 チンチラの血清アミラーゼはほかの動物種よりも低値を示すことが多く、半減期も短いことから評価が難しいとされています。 |
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上昇 |
膵臓疾患、消化器疾患 |
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まとめ
今回も説明したいことが多くて、とても長文になってしまいましたが、各検査ごとの主な観察ポイントをまとめると、下記のとおりになります。
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栄養状態、呼吸状態、活動性、姿勢、皮膚炎、外部寄生虫、体表の腫瘤、雌であれば乳腺の異常、眼疾患、歯冠の異常、胃の拡大、腎臓の腫大や変形、過剰な蓄尿などを視診、触診、聴診により評価する。 |
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糞便検査(直接法) |
消化状態(被毛などが多く含まれていないか)、消化管疾患(腸内細菌叢のバランスが崩れたことにより、一定の形態を示す細菌が増加していないか)、消化管内部寄生虫症(寄生虫卵やシスト、オーシストの検出は難しいため、トリコモナスやジアルジアのトロフォゾイトといった運動性のある栄養型虫体や糞線虫の探索を主に行う)、細胞成分の有無を評価する。細菌性腸炎が疑われる場合、原因菌の同定のために細菌培養検査が必要。 |
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糞便検査(浮遊法) |
消化管内部寄生虫症:運動性のある栄養型虫体や糞線虫の検出はできないため、寄生虫卵やシスト(嚢子ともいう:休眠状態のサナギのような形態)、オーシスト(接合子嚢:接合子の周囲に被膜、被殻が形成されたもの)の検出を目的とする。 |
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皮膚検査 |
主に、脱毛や鱗屑、落屑、炎症、紅斑、膿瘍、潰瘍などの特異的な症状がみられる場合に、原因と原因菌の同定のために行う。被毛検査(トリコグラム)は、被毛を直接顕微鏡で観察する簡便な皮膚検査で、皮膚糸状菌症や外部寄生虫症、細菌性皮膚炎等の原因菌の同定のためには培養検査が必要。 |
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尿検査 |
潜血、尿蛋白、グルコース、PHなどの尿中濃度を観察することで、泌尿器疾患の診断に役立てる検査。潜血や尿蛋白の陽性反応は、膀胱炎や尿道炎、腎不全、尿路結石といった泌尿器疾患が疑われ、グルコースが陽性反応を示した場合は糖尿病などの病気、PHの変化は何らかの疾患による細菌の増殖が疑われる。 |
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X線検査(頭部) |
不正咬合などの歯牙疾患や周囲の骨の状態の評価に有用で、特に歯根に存在するあらゆる病変を評価するために不可欠な検査。 |
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X線検査(胸・腹部) |
消化管疾患を中心に、循環器疾患、呼吸器疾患、肝疾患、泌尿器疾患、生殖器疾患等の病態がみられないかを評価する。 |
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血液検査(CBC) |
体内でどのようなことが起こっているのか全身的な状態を把握する目的で、血液中の赤血球数(RBC)、白血球数(WBC)、血小板数(PLT)、ヘモグロビン濃度(Hb)、ヘマトクリット値(Ht)を調べる検査。 |
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血液検査(血液生化学検査) |
問題が起こっている場所を把握する目的で、血漿中の蛋白質や脂質、グルコース、尿素窒素、カルシウム、無機リンといった物質濃度や、酵素活性を調べる検査。 |
チンチラの健康を維持し、疾患の予防、早期発見に役立てるために、チンチラの健康診断としてどの程度お願いするかを決めるのは、獣医師ではなく飼い主である私たち自身です。
「動物病院に連れていくとストレスをかけてしまうので、よっぽどのことがない限り連れていかない方がいいですよ」と説明しているペットショップもあるそうですが、すごく無責任な説明だな~って思います。
チンチラのように、野生の生活下では捕食されてしまう弱い立場にある動物は、本能的に病気を隠そうとする傾向があるため、具合が悪いと気が付いたときには既に病気が進行していて手の施しようがないということが珍しくありません。
チンチラのように弱い立場にある動物にとって、動物病院とは「病気になってから訪れる場所」ではなく、「病気を未然に防ぐために訪れる場所」として活用するべきです。
病院に連れていくことでストレスをかけてしまうことは間違いないですが、健康なときと体調が弱っているときではストレスによるダメージが全く異なるということ、さらに病院に連れていくストレスよりも治療のストレスの方がはるかに大きいということも念頭に入れるべきです。
チンチラの健康を維持し、疾患を予防、早期発見ができれば、治療する必要性もないわけですから、結果としてストレスを減らすことにつながります。
チンチラの健康診断として身体検査に加えてよく行われている検査の種類や、追加して受けることでどのようなことがわかるのかを理解して、今後チンチラの健康を維持し、疾患を予防、早期発見するために、チンチラの健康診断としてどの程度お願いするかを検討する材料として役立てて頂けるといいな~と思います。
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「ウサギの医学」(霍野晋吉 著 / 株式会社緑書房 発行 / 2018.09) – Kerr,M.(1989). Veterinary Laboratory Medicine.Clinical Biochemistry and Haematology. Blackwell Scientific Publications. |
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「ラビットメディスン」(Frances Harcourt-Brown 著 霍野晋吉 監訳 / 株式会社ファームプレス 発行 / 2008.2) |
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「カラーアトラス エキゾチックアニマル 哺乳類編」(霍野晋吉・横須賀誠 著 / 株式会社緑書房発行 / 2002.7) – Merry CJ.(1990). An intraduction to chinchillas. Vet Tech 11. |
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「カラーアトラス エキゾチックアニマルの診療指針」(霍野晋吉 著 / 株式会社インターズー発行 / 1998.12) |
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「げっ歯類とウサギの臨床歯科学」(David A. Crossley・奥田綾子 共著 / 株式会社ファームプレス発行 / 1999.7) |
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「PERFECT PET OWNER’S GUIDES チンチラ 完全飼育」(鈴木理恵 著 田向健一 医療監修 / 株式会社誠文堂新光社発行 / 2017.1) |
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「-わが家の動物・完全マニュアル- チンチラ」(Richard C.Goris 総監修 霍野晋吉 医学監修 / 株式会社スタジオ・エス発行 / 2000.10) |
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「小動物獣医学情報誌 SAC No.187 -糞便検査の極意-」(呰上大吾 著 / 共立製薬株式会社発行 / 2017.7) |
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「IDEXXPRESS vol.03 -犬の消化管内寄生虫検出を目的とした糞便検査-」((伊藤直之 著 / アイデックス ラボラトリーズ株式会社発行 / 2011.12) |
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「小動物獣医学情報誌 SAC No.186 -皮膚検査-」(百田豊 著 / 共立製薬株式会社発行 / 2017.4) |
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「小動物獣医学情報誌 SAC No.185 -尿検査の基礎知識-」(森昭博・呰上大吾 著) / 共立製薬株式会社発行 / 2017.1) |
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「小動物獣医学情報誌 SAC No.188 -生化学検査-」(石岡克己 著 / 共立製薬株式会社発行 / 2017.10) |